MAKESとdoubletが出会ってから、これまで。そして今回の別注Tシャツに込めた思い。デザイナーの井野さんに、積み重ねてきた時間と、これからの関係について聞きました。
MAKESでは、これまで5つの店舗・5人の店長がdoubletを取り扱ってきました。この受け継がれてきた歴史を、どう感じていますか?
正直、最初の頃はどこに行っても成果を出せなくて、たらい回しにされているのかな、とハラハラしていました(笑)。
でも振り返ってみると、全然そうではなくて。時代の流れやお店の役割を見ながら、「今のdoubletなら、どこにいるのが一番伝わるんだろう」とずっと考えてもらってきた結果なんだと思います。
なので今は、ROMANTIQUEにdoubletがいる意味を、ここから一緒につくっていきたいと思っています。
井野さんから見て、MAKESはどんな印象がありますか?
ファッションのテーマパークみたいな存在です。
富山の街を歩いていると、お化け屋敷みたいに少し緊張感のあるモードな店があったり、ジェットコースターみたいにカジュアルでワクワクする店があったりする。着ぐるみこそ着ていないけれど、スタッフの皆さんの接客もどこか愉快です。
MAKESさんとは関係ないですが、お腹が減ったら富山ブラックまである(笑)。街ごと含めて楽しめる、僕にとってはそんなファッションテーマパークです。
これまでMAKESでdoubletを扱ってきた中で、印象に残っている出来事はありますか?
やっぱり、鱒寿司入りのTシャツを販売した時ですね。
ちょうどコロナ禍の真っ最中で、お客様がなかなか外出できない時期だったので、少しでも外に出て、買い物そのものを楽しめる体験をつくれないかと考えて生まれたアイテムでした。
本物の鱒寿司に使われている木桶にTシャツを入れたかったのですが、木桶を作っている富山の工場さんも、通常は鱒寿司以外の用途では販売していなかったんです。それでも、なぜこのTシャツを作りたいのかをお話ししたら快く賛同してくださって、本当に木桶入りのパッケージを作ることができました。
店頭にその木桶を山積みにして、発売日にお客様が嬉しそうに一つずつ手に取って、その山がどんどん低くなっていった。コロナ禍だったから余計にそう感じたのかもしれませんが、今でもすごく良い思い出です。
今回の企画を通して、お客様に一番感じてほしいことは何ですか?
鱒寿司の時と同じで、やっぱり「体験」だと思います。
あの時はコロナ禍でできることに制限がありましたが、今ならもっといろんなことができる。商品を買うだけではなく、人と話したり、昔の写真を見たり、これまでのdoubletとMAKESの時間を知ったり。今回は僕らもお客様と一緒になって、その時間そのものを楽しみたいです。
今回、商品だけではなく、写真や店長の言葉、当時の記憶まで展示します。この「モノ以外のもの」を見せることについて、どう思いますか?
僕らは今ではパリコレという舞台で発表できるようになりましたが、最初からそこにいたわけではありません。これまで出会った店長やスタッフの方々が、doubletを一人でも多くのお客様に紹介してくれて、知ってもらって、好きになってもらえて、その積み重ねがあって今があります。
僕ら自身、まだまだ道半ばですが、ここまで来られたのは、その時々で真剣に、時には必死になって一緒にやってくれた人たちがいたからだと思っています。
今回は昔を懐かしむだけではなく、ここから先どうなっていくのかを、MAKESさんと僕らだけではなく、お客様も巻き込みながら一緒につくっていくスタートになればと思っています。
今回の企画をきっかけに、これからMAKESとdoubletの関係がどうなっていったら面白いと思いますか?
もっとお客様の顔が見える関係になったら嬉しいです。
僕らは普段、服を作ってお店へ届けますが、その先で誰が手に取ってくれたのかまでは、なかなか分かりません。今回実際にお客様と話すことで、「この前話したあの人が、あの服を買ってくれましたよ」みたいな会話ができるようになったら面白い。ブランド、お店、お客様が、もう少し近い距離でつながっていけたらいいなと思っています。
それぞれの店長によって、doubletとの付き合い方に違いを感じることはありましたか?
意外と、あまり違いを感じないんですよね。なぜだろうと考えると、現社長の河野さんの存在が大きい気がします。気がつくと必ず隣にいるというか、実際そこにいなくても、なぜかいるような気がする(笑)。
それぞれ店長の個性は違うはずなのに、どこかに河野さんの考え方やMAKESらしさが流れている。うまく言葉にするのが難しいんですが、「みんな少し河野さん」という感じなのかもしれません。
逆に、店舗や店長が変わっても「これはMAKESらしいな」と感じた部分はありますか?
やっぱり、河野さんがいてもいなくても、いるような感じですね(笑)。
店舗ごとに雰囲気も違うし、店長の個性も違うのに、その奥にあるものは不思議と共通している。作り手に対するリスペクトもすごくあって、河野さんが服のことを「お洋服」って呼んでいるのも、僕はとても好きです。そういうところも含めて、MAKESらしさなのかなと思います。
ROMANTIQUEがdoubletにとって、どんな場所になってほしいと考えていますか?
ラーメンで言うなら、「富山ブラック」がある場所になってほしいです。
どこでも同じように見られるdoubletではなく、ROMANTIQUEだからこそ出会えるdoubletがある。富山に来たら、ROMANTIQUEでdoubletを見たい、と思ってもらえるような場所になったら嬉しいです。
別注アイテムのコンセプトや、形になるまでの過程を教えてください。
最初のアイデアは、フロントに「I ❤️ NY」のロゴみたいに「I ❤️ MAKES」とプリントして、Tシャツをひっくり返すと歴代店長の顔になって着られる、というかなりふざけたものでした。もちろん却下され(笑)、そこから今村さんに、おわら風の盆をモチーフにできないか、と提案をいただきました。
最初は、歴史あるお祭りをどう扱うべきか迷いもありましたが、今村さんがおわらを長く受け継いできたこと、そして、MAKESとdoubletの歴史を今は自分が受け継いでいる、と話してくれたことで一気につながりました。
今回の別注アイテムを着て、おわらのように、時間を忘れてみんなで楽しめるイベントにできたらいいなと思っています。